
この事例は、**アルミニウム A1100、板厚 0.5mmという、非常に特殊かつ難易度の高い条件でのレーザー切断加工に対応したものです。
一般的なレーザージョブショップでは、この条件の加工を受け付けない、または実績が少ないのが現状です。その主な理由は以下の3点に集約されます。
材料の特殊性(A1100):
レーザー切断で最も一般的に使用されるアルミ合金はA5052です。A1100は純アルミに近く、流通量や加工機会がA5052と比較して少ないため、材料の入手ルート確保自体に手間とコストがかかることがあります。
薄板(t=0.5mm)の取り扱い:
レーザー切断において、板厚が薄くなるほど、熱による歪み(ひずみ)や、切断時の溶融物の吹き戻し、ビードの付着などの品質管理が格段に難しくなります。特にアルミ材は熱伝導性が高いため、薄板は熱影響を受けやすく、高精度な切断が困難です。
総合的なノウハウ不足:
上記2つの要因が重なることで、対応できるレーザージョブショップが限られます。特に「A1100」という材料に最適化した「$t=0.5\text{mm}$」に対応できる切断速度、アシストガス圧、レーザー出力の組み合わせ(加工条件)を持つノウハウが重要となります。
当社では、これらの課題に対し、長年培ってきた薄板金属加工の知見と最新のレーザー技術を組み合わせて対応しました。
一般流通性の低いA1100材について、複数の提携サプライヤーとのネットワークを駆使し、必要な時期に必要な数量の材料を安定して確保できる体制を構築しました。
最も難易度が高いとされた「熱による歪み」と「切断品質」の確保のため、以下の対策を実施しました。
低出力・高速切断の最適化:
熱影響を最小限に抑えるため、レーザーの出力を材料に合わせた適切なレベルに調整し、一方で熱が滞留する前に加工を終えるよう切断速度をシビアに最適化しました。
クリーンな切断面の追求:
アシストガス(通常は窒素ガスや酸素ガス)の種類と圧力をA1100材の特性に合わせて調整し、切断時に発生するドロス(溶融物)の吹き戻しや裏面への付着を徹底的に抑制しました。
極薄板はテーブルへの固定が難しく、加工中に材料が浮き上がると焦点距離がずれ、品質が低下します。
専用のクランプ治具を用い、材料全体を均一かつ適切に固定することで、加工中の微細なブレや浮き上がりを防止し、高精度な切断を実現しました。
特殊なA1100の$t=0.5\text{mm}$という条件にもかかわらず、お客様が求める公差をクリアし、熱歪みのない平滑性の高い切断品を納品することができました。
この事例は、単に機械のスペックに頼るだけでなく、材料特性を熟知したノウハウと、特殊材・薄板加工に特化した技術力によって、他社では断られてしまうような難加工案件にも対応可能であることを証明しました。
アルミA1100はもちろん、その他の特殊材料や極薄板のレーザー切断、金属加工でお困りのことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。豊富な経験と技術で、最適な加工方法をご提案いたします。